大震災後の日本社会を動かす女性リーダーたちの
パワフルな取り組み!
代表あいさつダイジェスト
震災以降、人々の価値観、社会の在り方が問い直されている。
目黒 依子氏(上智大学名誉教授)
3.11の東日本大震災は、日本人の生き方、価値観、日本社会の制度やガバナンスについて、再考を促す大きなインパクトとなった。さらに経済大国として、開発途上国を支援する立場にあった日本に、多くの途上国や、国際機関、NPOから支援の手が差し伸べられ、グローバルな人と人とのつながりの大切さに気づかされた。一方、被災地では数百のNPOや社会起業家たちの活躍が注目された。このようなジャンルでは、昔から女性のリーダーたちが活躍してきた。そのロールモデルをパネリストとしてお招きした。 世界を視野におさめ、地域や企業、行政、国など従来の枠を超えた連携の中で活躍する女性たちのパワーは、今後日本を変えていく原動力になると期待される。
パネルディスカッションダイジェスト
社会的課題を解決するNPOや社会起業家に注目が集まっている。
野村 浩子氏(日本経済新聞社 編集委員)
震災以降、NPOの代表や、ソーシャルビジネスという分野で社会的課題を解決しつつ事業としても成立させている経営者などが、非常に存在感を増してきている。 一方、大手の企業では、被災地に社員をボランティアとして送りこみ、NPOをパートナーとして現地で活躍をした。 今後、日本の国内市場が縮小していくなか、成長を求めるなら、さまざまな社会的課題を解決し新しい価値を生み出すか、新興国への進出やBOPビジネスへの参入など、これまでにない取り組みが必要だ。このような状況の中、新しい環境に飛び込んでゼロから解決法を生み出すことのできる人材が求められている。被災地でのボランティア活動は、もちろん被災地支援が最大の目的ではあるが、実は人材育成の場となると企業は考えている。これからは、CSRにとどまらず、CSV(Creating Shared Value、共通価値の創造)=社会的課題の解決と、企業の利益向上を両立させ、社会にとっても企業にとっても利益をもたらすという考え方が必要だといわれている。そこに気づくか気づかないかは、企業の存続にもかかわってくるだろう。NPOで活躍する人、社会起業家として活躍する人たちのパッションには胸を打たれる。しかし会社員にも、本業を活かして、社会貢献をしたり、プロボノという形でホワイトカラーボランティアをするなど、できることはある。また、そういうことを考えなければならない時代になっている。
家庭教育、学校教育が、ボランティア活動の原点
細川 佳代子氏(NPO法人勇気の翼インクルージョン2015理事長、認定NPO法人スペシャルオリンピックス日本名誉会長)
現在、「世界の子どもにワクチンを」「スペシャルオリンピックス日本」「勇気の翼インクルージョン2015」など5つのNPOを立ち上げて運営している。なぜそんなパワーがあるのかと言われ、人生を振り返ると、その原点は家庭教育と学校教育にあると思い至った。とくに学校では、隣人愛、博愛、奉仕ということを学び、子どもの頃から自然体でボランティア活動をしてきた。スポーツを通じて知的障害者の自立支援をサポートする「スペシャルオリンピックス日本」は、ある牧師様の「知的障害のある子は、まわりの人々に優しさや思いやりを教えるために神様から与えられたプレゼント。素晴らしい可能性を秘めているのに、かわいそうだからとただ擁護するだけでは、可能性を伸ばすことができないまま寂しい人生を送ることになる」という言葉を聞き、ショックを受けたことがきっかけで始めた。2007年に立ちあげた「勇気の翼インクルージョン2015」は、2015年までに、障害のある人があたりまえに地域社会に参加して幸せに暮らせる社会を目指している。これらの活動は、一切国からの支援は受けず、すべて個人と企業の寄附(ファンドレイジング)で運営してきた。しかし、今年は初めて国から、スペシャルオリンピックス世界大会の選手団派遣に助成金が頂けた。以前の日本では考えられないこと。それだけ、日本も変わってきたということだと思う。
人は、だれかのためにならがんばれる。その力を引き出すのが本当の国際支援。
木山 啓子氏(特定非営利活動法人「JEN」理事・事務局長)
JENは、緊急支援など国際協力をしている団体。東日本大震災の現地にも赴き、復興支援活動をしている。困っている人たちを救済することはいいことだが、支援が人をダメにする危険性もあることを肝に銘じて、JENでは「自立を支えること」を大切にしている。色々な国で支援活動をしてきて、どんなにひどい状況にあっても輝かしい復活を遂げる人を見てきた。どんなに極限的な状況でもがんばれるとしたら、それはだれか別の人のためだと気づいた。これはもう、人間のDNAの中に入っているとしか思えない。DNAに本来入っている力を発揮できるようにすることが、JENのやっていきたい自立支援。JENの活動に協力してくれる企業は多い。被災地や本部にボランティアとして参加してくれたり、パンフレットなどの制作を無償でしてくれるなど、さまざまな協力を得ている。
世界に通用するブランドを発信し、途上国のイメージを変えていきたい。
山口 絵理子氏(株式会社マザーハウス 代表取締役兼デザイナー)
発展途上国から世界に通用するブランドをつくることをミッションに、途上国で作った商品を先進国で売るというビジネスをしている。従来のように、かわいそうだから買ってあげるとか、安かろう悪かろうのものづくりではなく、途上国の人が誇りを持つことができるものづくりをしたいと決意したのが24歳のとき。アジアの最貧国から、アジアで最高の品質のものを作るのは簡単ではなかった。ものづくりの前に人をつくらなければならない、その前に環境を作らなければならない。途上国といっても、バングラデシュとネパールでは働く人の意識が違う、電気などのインフラも整っていない。そんな中でのビジネスを模索しながらやってきた。自分にしかできないことをやりたい、と思ってきたので、女性だからということを意識したことはないが、小売や制作という仕事は女性ならではの感性やおもてなし精神が大事だと思う。女性だから、プライドの高い現地の人ともぶつからずにやって来られたと言う面もある。途上国の人たちが誇りを持てるものづくりをしてそれによって途上国のイメージを変えていきたい。