リーダーシップ111(ワンワンワン)

HOME > >活動レポート >公開シンポジウム2014 取材レポート

高松和子代表幹事あいさつ

 リーダーシップ111がスタートした20年前には女性の管理職は本当に珍しくて珍獣のような扱いの時代でもありましたが、最近は大分数もふえてまいりました。安倍政権になりましてから、日本の成長戦略の中核に女性の活躍を置いていることもあり、いろいろなところで女性活躍の支援の活動が行われているかと思います。

 こうした中、私どもリーダーシップ111では、20回目のシンポジウムを開かせていただきます。これまでのシンポジウムでは、ロールモデルになるような方のご講演をいただいたり、あるいは企業のトップの方に来ていただいて、経営者の視点からダイバーシティについてお話をいただいたりということを続けてまいりましたが、今回はそういったお話を聞く機会はいろいろなところで増えてきているということもあり、これから社会を担っていただく次の世代の皆様に、ぜひ新しいリーダーシップをとっていただけるヒントになるような会にしたいということで、この「未来を拓く女性たちへ」というテーマにいたしました。

 今回、基調講演には、元日本アイ・ビー・エムの専務取締役で、現在はNPO法人J−Win理事長として、実際に企業における女性の活躍を積極的に支援していらっしゃいますし、また、最近はジャパンダイバーシティネットワークというダイバーシティを推進する人たちのネットワークを立ち上げた内永ゆか子さんに基調講演をお願いしております。また、パネルディスカッションでは、経済産業省のキャリアから山形県副知事を経て、現在は日立製作所で活躍をしていらっしゃる荒木由季子様。それから、マスコミでもいろいろと取り上げられて話題にもなっておりますが、品川女子学院という女子教育の中では非常に画期的ないろいろな取り組みをされている女子校の校長先生、漆紫穂子先生。このお二人をパネリストにお迎えし、内永さんを含めて3名でお願いしております。また、モデレーターを立教大学の尾崎俊哉先生にお願いしました。活発な議論、本音の議論を進めていただけるものと思います。

 これから3時間ばかりのお時間でございますけれども、どうぞ皆さん、ゆっくりとお話を聞かれて、一つでも二つでもこれからのキャリアの糧になるようなヒントをお持ち帰りいただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

基調講演 内永ゆか子氏 [1]

 皆さん、こんにちは。ただいまご紹介いただきましたJ-Winの理事長をしております内永です。どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)
 私が感激したのは、リーダーシップ111が20年を迎えるというこの歴史ですね。すばらしいと思います。いろいろな会があり、いろいろな人たちがすばらしい試みをたくさんされていますが、私が最も評価するのは永続性ですね。スタートすることはできますが、それをどれだけ長く続けるか、続けながら成果を上げていくか、これはなかなかできないことで、それを成し遂げているリーダーシップ111に私は敬意を表したいと思います。そしてこの20年記念のシンポジウムにご招待いただいて、本当にありがとうございます。

なぜダイバーシティなのか?

 きょうはダイバーシティのお話をさせていただきますが、このダイバーシティが非常にホットトピックスになっています。それは安倍首相が日本経済復活の戦略の1つとして提唱しているからですが、安倍さん曰く、少子化、出生率が下がっているため労働力の減少が著しいと。その中で人口の半分の女性を活用しないのはもったいないというようなことをおっしゃっています。確かにそれは事実ですが、私はダイバーシティの目的というか価値は、少子化対策でもなければ、労働人口が減ったから女性を使いましょうということがメインではないと思っております。そういう要素も多少はありますけれども、今の世界の状況が実はダイバーシティを求めているのだと思っています。

 みなさん、ワールド・エコノミック・フォーラムで出している「ジェンダーギャップ指数」というのをお聞きになられたことがあると思います。昨年は135カ国中105位、ことしは何とか1つ上がって104位ですが、実は2012年には98位でした。どれもあまり威張れる数字ではないですが、ここ数年、これだけ日本中がダイバーシティ、ダイバーシティと言って、様々な企業が「女性役員が出ました」とか言っている中で、何で順位が落ちていくのか? 順位というのは相対的なものですから、要するに、日本よりもほかの国のほうがもっとがんばっているということですよね。それだけこのダイバーシティが、世界の中で非常に重要な戦略的な要素になっているということです。

 じゃ、なぜそうなのか?私の出身はもともとITですが、このITの進歩、それからネットワークのスピードが非常に速くなっている。このことによって世界はどんどん小さくなってきていますね。物理的な距離は変わりませんけれども、世界の裏側で起きたことがその日のうちに、遅くても翌日にはその影響がもろに皆様方のビジネスに、そして生活の中に出てきていると思います。こんなに物事のスピードが速く、変化が速く、グローバルに影響力を与え合うという現象は、10年前には考えられないことでした。

 これだけ変化が激しい、速いということは、ビジネスのスピード、変化がすごく速くなったと言うことです。ビジネスのスピードが速いということは、ある分野でリーダーシップをとっている企業に対して、2番手のところが追いつき追い越すのは、同じビジネスモデルをやっている限りにおいては無理だということです。要するに、同じビジネスセグメントで世界のトップを走っているところを追い抜こうとするときには、ビジネスモデルを変えるしかないということなのです。別の新しいビジネスモデルで競争することによって、そのモデルがよければリーダーシップをとることができる。逆の言い方をすると、今走っているトップの企業も同じビジネスモデルのままでは、後から来た企業に追い抜かれるということです。

 モデルを変えてチャレンジしていくということは、過去の成功体験に寄りかかってモデルを考えたのではだめだということです。日本の今までの成功は、どちらかというと、同じビジネスモデルの中で、コストを下げてユーザビリティを上げて、そして競争力を上げるという、そういうやり方で世界の冠たる地位を築いてきたわけです。ところが、これだけモデルの変化が激しくなってくると、過去の成功体験を下に新しいモデルを考えるのでは難しい。

 今、世界中がなぜダイバーシティ、多様性と言っているかというと、新しい発想、新しい価値観といったものをたくさん集めて、いかに新しいモデルを作るかというところに、一生懸命になっているからです。だから、ダイバーシティというのが10年前と比べると圧倒的に重要な「企業戦略」になっているのです。

 そういう観点から見たときに、日本中で今ダイバーシティ、ダイバーシティと言っていますが、本当に理解されているでしょうか。必要性に納得しているでしょうか。

 でも、ダイバーシティと女性活用は必ずしもイコールではないという人がいます。おっしゃるとおりです。女性は、ダイバーシティの1つの要素でしかありません。しかしながら、私は女性が活用できなくて、本当の意味の多様性なんかできないと思っています。世界中、これまでは男性がマジョリティでした。ですから、どんなに優秀な女性でも、メインストリームを歩いては来られなかった。マイノリティであった女性たちが、違った価値観をもち、成功体験を共有してこなかったということが、実はこれからの企業にとってとても大事な要素なのです。そういう意味で、女性を活用し、女性を活用できる環境を作ることで、外国人ですとか、あるいは若い人や高齢者など、いろいろ違った多様な人たちをより活性化して活用できるようになるのです。そういう企業が21世紀は生き残ると言われています。現にそういう動きがどんどん出てきていて、このことがダイバーシティの一番のポイントだと私は思っています。

 企業が強くなる、日本社会が競争力を高めるために、多様性が必要なのだと思っています。昔からの古いモノカルチャーの日本から脱皮しないとこれからの競争には勝てない。そういう意味でダイバーシティを主張し、その第一歩としての女性活用をと、女性の方々がどんどん活躍する場を持てるように、微力ですけれどもいろいろな活動をしています。
 ということで、少し前置きが長くなりましたけれども、ぜひこのダイバーシティの本当の価値ということを皆さん方にご理解いただきたいと思っています。

IBM時代のダイバーシティへの取り組み

 私が、ダイバーティの価値を本当にそうだと思ったのはなぜかということについてちょっと古い話ですが、お話しましょう。IBMはITの世界ではナンバーワンを自負していた時代がありました。ところが1993年に初めて赤字を出しました。赤字になってガースナーという人が外から来て社長になり、新しい戦略を入れたのですが、その一つがダイバーシティでした。IBMが本当にひどい状況に陥ったときにガースナーはダイバーシティを入れて、ビジネスモデルを徹底的に変えました。

 それまではハードウェアがIBMのビジネスの主流でした。利益率もハードウェアだけで3割とか、非常に高かったのですが、ハードウェアはコモディティ化(市場参入時には高付加価値を持っていた商品が、後発品との競争のなかで普及化し、優位性や特異性を失うこと)していくわけです。コモディティ化するものは、IBMのメインストリームではあり得ないということで、ハードウェアが中心の40万人の会社がソフトウェア中心に移り、そしてソフトウェアだけでは不十分であるとサービスに移り、サービスからよりハイバリューなものをということで、コンサルタントの会社に移っていったわけです。こういった変化の速さ、変化ができたこと、これはいろんな価値観の人間、多様な人間が市場を見て、そして議論することによって、将来を見、会社を変えていくことができたわけです。

 ガースナーがIBMを卒業した後で日本に来ることがありました。私も縁があってお会いしたときに、「ガースナーさん、あなたがIBMに来てダイバーシティをやってくださった。そのおかげで日本IBMも女性の役員が少し増えて、日本の中でもお客様にこんなお話ができるようになりました。どうもありがとうございました」と言ったのです。そうしましたら、ガースナーが、「私は別に女性のためにやったのではない。IBMのためにやったのだ」ということを明確に言いました。

 もう一つ言ったことは、なぜそれがIBMのためかというと、今までのIBMというのは、WASP(ワスプ)と呼ばれるホワイト・アングロサクソン・プロテスタント、東海岸のボストンなどあの辺出身の白人の男性たちがトップエグゼクティブグループを作り、その同一性の中でIBMの方針を決めてやっていたわけです。世の中の変化に対してわからなかったわけではないのですが、その情報をどう解釈したかというと、IBMが今まで成功してきたパターンで解釈したのです。どんな数字もどんな情報もある一定のバイアスをかけて見てみると、そこから真実が見えてこなくなる。結果として、IBMは93年に赤字になったわけです。

 私はそれと同じ話を実は日産の志賀さんから聞きました。日産の志賀さんに「日産さんは非常にダイバーシティを進めていらっしゃいますけど、日産にとってダイバーシティってどんな価値があったのですか」と伺いましたら、日産はルノーと一緒になるまで、本当に一生懸命いろいろなことをやってきたけれども、ずっと下り坂を下っていて非常に苦しかった。ルノーと一緒になることでV字カーブで復活できた。それまでの日産というのは、過去の成功体験でやってきた男性たちが日産を引っ張ってきて、お客様の情報とか新しい技術とか情報はいろいろ入ってくるけれど、日産という額縁の中でしか判断してこなかったと、そうおっしゃっいました。額縁です。そこでもうバイアスがかかっているわけですね。

 ところが、ルノーと一緒になって、ルノーの人が「何でそういうふうに判断するのですか」とか、「このデータ、どうしてそういうふうになるのですか」と単純に聞かれて、初めてあっ、そうだったのかとわかって、日産の額縁を壊すことができた。そのことによって私たちはV字回復ができたのですと。実際はそんなに単純ではないと思います。しかしながら、この志賀さんのおっしゃったことは極めて本質を突いていると私は思いました。

 そういう意味で、先ほど申し上げたイノベーション、過去にこだわらない新しい発想がいかに大事か、これからますます大事になってくると思っています。

 当時の日本IBMは女性役員もいて、実は私ですが、日本の中では女性活用が進んでいる、社長は「うちはダイバーシティ進んでいるよね」と言っていました。けれど、世界全体のIBMからいうと、170カ国中170位、最下位だったのです。

 ガースナーはダイバーシティを戦略とすると決めましたので、売り上げと利益のレビューミーティングを毎月やりますが、それとは別に、女性活用がどれだけ進んでいるかというレビューミーティングを各国のトップとやったわけです。日本IBMの社長の北城さん(当時)はガースナーのところへ行って、うちは日本の中ではトップを行く女性活用の進んでいる会社です。女性で役員になっている人もいますよと。そうしたら、ガースナーが「それはよかった。でも、日本は最下位、何とかしなさい」と。このレビューミーティングは半年に1回やりますから、1回目は何とか日本で一番ということでしのいだけれども、2回目も同じことを言うわけにいかない、3回目は…。ということで、日本IBMのダイバーシティを進めるタスクチームを作って、私がリーダーでスタートしました。